制御性T細胞であるCD25+CD4+T細胞の発生・分化・抑制をつかさどる転写因子がFox (forhead box)ファミリーに属するFOXP3(マウスではFoxp3)であることが2003年報告された。この遺伝子をレトロウイルスベクターに組み込み、パッケージング細胞(プラットE)にて感染性ウイルスを産生させ、それをCD4+T細胞へ導入することで、CD25+CD4+制御性T細胞へ転換させることができる。そのCD25+CD4+制御性T細胞を全身性エリテマトーデスのモデルであるMRL/lprマウスの腹腔内に投与することで、全身性エリテマトーデスの病勢が抑制できるか検討する実験を計画していた。現段階では、パッケージング細胞にて感染性ウイルスを産生させる時点で、効率が40%程度と低いため、MRL/lprマウスへの実際の投与には至っていない。 一方、MRL/lprマウスに投与した際、比較検討するマーカーとして各種サイトカインを考えているため、CD25+CD4+T細胞の新たな作用を検討した。その結果、CD25+CD4+T細胞は抗原提示細胞を抑制することで、他のT細胞を抑制することができるということが判明した。具体的なCD25+CD4+T細胞の作用は、抗原提示細胞からのIL-12産生を抑制すること、抗原提示細胞上のB7分子(CD80とCD86)の発現を抑制することである。また、CD25+CD4+T細胞は、他のT細胞からのIL-2等で増殖することが出来るため、免疫反応を終結させるネガティブフィードバックの一端を担っていることが明らかになった。
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