研究概要 |
本研究計画全体の目的はIL-13シグナルの制御による気管支喘息の治療法の開発である.この実現のために,平成16年度においては以下の二つの研究目的を設定し,実験を行った.本年度については目的を達成したと考えられる. 1.IL-13と受容体との結合様式の解明 IL-13は気管支喘息をはじめとするアレルギー疾患の病態において重要な役割を果たしており,IL-13とその受容体との結合様式を知ることによって適切な阻害戦略の開発が可能になる.われわれは,IL-13/IL-13受容体複合体のホモロジーモデルに従って,IL-13Rα1につき16種,IL-13Rα2につき20種のアミノ酸置換体を作成し,それぞれの変異がIL-13との結合に与える影響を調べた.その結果,IL-13Rα1のLeu319,Tyr321およびIL-13Rα2のTyr207,Asp271,Tyr315,Asp318がIL-13との結合に関与していることが分った.また,これらの残基とは別に受容体のアミノ末端のフィブロネクチンタイプIIIドメイン(D1ドメイン)の機能解析を行い,IL-13Rα1のD1ドメインはIL-13との結合に必須であるものの,IL-4との結合には不要であること,およびIL-13Rα2のD1ドメインは受容体の発現に重要であることが判明した.これらの知見よりIL-13:IL-13Rα1:IL4Rαの複合体は2:2:2の6量体を形成すると予想された. 2.ウイルスベクターを用いて制御性IL-13受容体を喘息モデルマウスに発現させることによる喘息病態のコントロール 気管支喘息の動物モデルとしてオバアルブミン(OVA)により感作・誘発される喘息モデルが広く用いられている.われわれは,ウイルスベクターを用いてIL-13の制御性受容体であるIL-13Rα2をマウス気道組織に発現させることによりOVA誘発喘息モデルの喘息症状の緩和が可能であるか否か検討を試みた.予備的な実験においてはIL13Rα2発現により,気道過敏性の低下,気管支洗浄液中の好酸球数の低下が確認された.
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