研究概要 |
膠原病は自己細胞成分と反応する多種類の自己抗体産生を特徴とし,これら自己抗体は臨床的意義や病因追究のために重要であるが,RNAを対応抗原とする自己抗体に関する報告はほとんどない.本研究では核内低分子RNAに対する自己抗体の検出法を開発し,その臨床的および病因的意義を明らかにすることを目的とした.特に抗U1 RNP抗体は混合性結合組織病(MCTD)の診断上必須な病因的自己抗体で,核酸と複合体を形成する蛋白部分が主要な自己抗原であるとされているが,近年U1 RNAを認識する抗体が存在することが報告されている.本年度は抗U1 RNA抗体の高感度な測定法を開発し,同抗体の臨床的意義を追究した. MCTD患者を対象とし,患者血清中の自己抗体を二重免疫核酸法,RNA免疫沈降法により確認した.HeLa細胞破砕物よりフェノール抽出した核酸成分と患者血清IgGを吸着したプロテインAセファロース粒子と反応させ,尿素-PAGEで分画し銀染色で検出することにより,抗U1 RNA抗体測定法を確立した.MCTD患者血清についてかかる方法を用いて検査を行い,抗U1 RNA抗体陽性率とその臨床特徴を分析した. 結果として,MCTD患者63例中,4例は抗U1 RNP抗体に加え抗U2 RNP抗体が陽性で,抗U1 RNA抗体は20例(32%)で陽性であった.抗U2 RNP抗体同時陽性4例はすべて抗U1 RNA抗体陽性であった.抗U1 RNA抗体陽性例では,食道蠕動運動低下が多く,蛋白尿は少ない傾向にあった. 現在,抗U1 RNA抗体の簡便かつ定量的測定を可能とするELISA法を確立するため,HeLa細胞抽出物より精製したU1 RNAを,高濃度に安定した状態でプラスチックプレートに固相化する方法を開発中である.また,多数のMCTD患者を含む膠原病患者を対象として抗U1 RNA抗体を検出している.
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