研究概要 |
膠原病は自己細胞成分と反応する多種類の自己抗体産生を特徴とし,これら自己抗体は臨床的意義や病因追究のために重要であるが,RNAを対応抗原とする自己抗体に関する報告はほとんどない.本研究では核内低分子RNAに対する自己抗体の検出法を開発し,その臨床的および病因的意義を明らかにすることを目的とした.特に抗U1 RNP抗体は混合性結合組織病(MCTD)の診断上必須な病因的自己抗体で,核酸と複合体を形成する蛋白部分が主要な自己抗原であるとされているが,近年U1 RNAを認識する抗体が存在することが報告されている.本年度は,昨年度開発した抗U1 RNA抗体の高感度な測定法(脱蛋白処理HeLa細胞抽出物を用いた免疫沈降法)により,MCTD患者を含む多数の膠原病患者を対象として測定し,その臨床的意義を検討した.さらにU1 RNAをプラスチックプレートに固相化し,ELISA法で定量的に抗U1 RNA抗体価を測定し,比較検討した. 119例の血清を対象として測定した結果,抗U1RNA抗体は,脱蛋白処理HeLa細胞抽出物を用いた免疫沈降法で56例(47%),ELISA法で26例(22%)に陽性であった.ELISA法で陽性と判定された血清は26例すべて免疫沈降法でも陽性であったが,ELISA法で陰性と判定された93例中30例は免疫沈降法で陽性であり,脱蛋白処理HeLa細胞抽出物を用いた免疫沈降法はより高感度であると考えられた.抗U1 RNA抗体陽性例では,有意に手指硬化,関節炎が多く,蛋白尿が少なく,強皮症に典型的であった.26例について,経時的に測定したが,臨床的疾患活動性と抗体価の相関は認められなかった. 現在,これら血清を対象としてU1 RNP構成ペプチドに対する抗体測定を行い,conformational epitopeを含めたepitope mappingを進めると共に,自己抗体産生機序解明を追究している.
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