(1)ヒトの慢性糸球体腎炎におけるSialoadhesin陽性マクロファージ浸潤の病的意義 sialoadhesin(Sn)は活性化マクロファージ(Mφ)に特異的に発現する抗原であり、動物の腎炎モデルではSn陽性細胞が進行性糸球体腎炎の進展機序に関与することが示唆されている。今回、ヒトの腎生検材料を用いて各種腎疾患におけるSnの発現を検討した結果、各種の慢性増殖性糸球体腎炎でSn陽性Mφの浸潤が認められ、Tリンパ球とともに糸球体および間質障害の進展機序に関与することを見出し、本結果を現在欧文誌に投稿中である。 (2)マクロファージ(Mφ)および糸球体上皮細胞(GEC)培養解析系の樹立 上述のSn陽性Mφの機能を解析する目的で、マウスのMφ細胞株(J744.1)および糸球体上皮細胞(GEC)株を用いた培養実験により、Sn陽性MQによるGEC障害機序を検討した。 J744.1は通常でも若干のSnを発現しているが、いくつかの既知の炎症性サイトカインによる刺激によって、その発現が増強することが確認された。さらに、Snを強発現するJ744.1Mφの培養上清をGEC培養系に添加したところ、GEC間に存在するスリット膜分子nephrinのmRNAの発現が有意に低下した。このことから、糸球体腎炎で見られる活性化MQはサイトカイン産生を介してGECを直接障害することが可能であることが示唆され、現在その液性因子の同定の試みを継続中である。
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