(1)ヒトの慢性糸球体腎炎におけるSialoadhesin(CD169)陽性マクロファージ浸潤の病的意義 sialoadhesin(Sn)は活性化マクロファージ(Mφ)に特異的に発現する抗原であり、動物の腎炎モデルではSn陽性細胞が進行性糸球体腎炎の進展機序に関与することが示唆されている。今回、ヒトの腎生検材料を用いて各種腎疾患におけるSnの発現を検討した結果、各種の慢性増殖性糸球体腎炎でSn陽性Mφの浸潤が認められ、Tリンパ球とともに糸球体および間質障害の進展機序に関与することを見出し、2004年にアメリカ腎臓学会で発表を行った。また、同内容の主旨を英文論文として発表した(11.研究発表の項に記載)。また、(3)小児および成人IgA腎症の病理組織学的な違いを検討し、その成因にSn陽性活性化MQが関与していることを見出し、現在英文誌に投稿中である。 (2)活性化マクロファージ(Mφ)由来のTNFαによる糸球体上皮細胞(GEC)障害 上述のSn陽性活性化Mφの機能を解析する目的で、マウスのMφ細胞株(J744.1)および糸球体上皮細胞(GEC)株を用いた培養実験により、Sn陽性MQによるGEC障害機序を検討した。 J744.1はIFNγ、IL1βなどの炎症性サイトカインおよびLPSによって活性化し、Snの発現が増強することを確認した。さらに、Snを強発現するJ744.1Mφ由来のTNFαがGECに発現するスリット膜関連分子(nephrin)のmRNA発現を減弱することを見出した。nephrinは糸球体において蛋白尿制御機構の一環を担う重要な分子であることが知られており、本研究結果から活性化MQがTNFαの産生を介してGECを直接障害しうることを明らかにし、2005年アメリカ腎臓学会に発表するとともに論文の投稿準備中である。
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