幼児期より小脳失調、ミオクローヌスを呈し、学童期に中脳に病変をきたしたMERRF(myoclonus epilepsy associated with ragged-red fibers)の1例を経験し、MRIおよび核医学検査の経時的変化と症状の関係について検討した。 【症例】12才、男児。主訴は歩行時のふらつき、手の振るえ。妊娠・出産、発達には異常は認めなかったが、4才頃より転倒しやすく、手の振るえを認めていた。6才時より構音障害を認め、精査目的にて当科に受診した。MRIにて軽度の小脳萎縮を認めたが、SPECTとFDG-PETでは異常を認めなかった。脊髄小脳変性症が疑われたが遺伝子検索では異常を認めなかった。10才時より筋力低下が進行し、学力低下を認めた。左眼球の内転障害を認め、頭部CTにて中脳に低吸収域を認めた。中脳病変部位のH-MRSにて乳酸のピークを認めた。SPECTでは右大脳半球の高潅流を認めたが、FDG-PETでは右大脳半球は低代謝領域であった。血中と髄液の乳酸・ピルビン酸が高値でMERRFを疑い、筋病理にてragged-red fiberを認めた。mtDNAの8344点変異を認めて確定診断した。まだ幼児期は血液中の乳酸・ピルビン酸値は正常であったが、経過とともに上昇した。Co Qの投与で筋力低下はやや改善し、1年後のMRIでは軽度の中脳の萎縮を認め、H-MRSにて乳酸のピークは消失した。またFDG-PETではブドウ糖低代謝領域は改善していた。 【考察】病態として、FDG-PETの結果よりミトコンドリアの酸化的リン酸化反応の障害によるATP産生の低下が考えられ、またH-MRSでは乳酸の蓄積が示唆された。幼児期の小脳失調をきたす例ではMERRFを念頭に置くことが重要と思われた。
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