研究概要 |
私達はDuchenne型筋ジストロフィーに対する治療法として、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AS-Oligo)を用いてスプライシング促進配列の機能を阻害することにより、エクソンスキッピングを誘導し、機能的なジストロフィン蛋白を発現させる方法を検討している。今回の研究は、ジストロフィン遺伝子のスプライシング促進配列に結合し、AS-Oligoによってその役割が阻害される核蛋白を同定し、機能を明らかにするものである。 私達は、現在までに、ジストロフィン遺伝子を構成する9つのエクソン(エクソン19、41、44、45、46、50、51、53、55)についてスキッピングを誘導できるAS-Oligoを確立している。今年度は今まで確立したAS-Oligoうち、エクソン44あるいはエクソン45のスキッピングの誘導するAS-Oligoについて、インフォームドコンセントを得て採取したDMD患者由来の皮膚培養細胞にMyoD遺伝子を組み込んだウイルスベクターを導入し形質転換を誘導した筋細胞を用いてジストロフィン蛋白の発現を回復させるかどうかについて検討した。AS-Oligoとしては昨年度と同様に、RNAとの結合能が強く、ヌクレアーゼに耐性な、2'-O,4'-C-ethylene-bridged nucleic acid(ENA)を含むRNA/ENAキメラを用いた。 エクソン44欠失細胞にはエクソン45のスキッピング誘導するRNA/ENAキメラを、エクソン45欠失細胞にはエクソン44のスキッピングを誘導するRNA/ENAキメラをそれぞれ導入した結果、mRNAでは、80〜100%で標的とするエクソンのスキッピングが誘導されていた。さらに免疫組織染色およびウエスタンブロット法によりストロフィン蛋白が発現することを確認した。
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