パラメトリック法による機能的MRI研究を行うためには、研究対象とする能力に相関して成績が分布する課題の作成が必要である。このために、発達性読字障害児(ディスレキシア)および健常児を対象として、読字能力に相関する認知課題の検討を行った。 <研究1:読字能力評価>まず客観的評価が可能な読字課題の作成を行った。小学校2年生から6年生までの、健常児38名、ディスレキシア児13名を対象とした。読字課題として短文の音読を行い、音読速度、読みの間の頻度、誤りの数、誤りの種類、理解度を評価した。判別分析により健常児群とディスレキシア児の判別に有用な指標を検討した。 <研究2:音韻認識課題>研究1と同じ被験者(健常児38名、ディスレキシア児13名)を対象とした。全例に3種の異なる音韻認識課題(モーラ分解、単語逆唱、母音比較)、言語性記憶課題、知能検査を行い、研究1で検討した読字能力との比較を行った。健常児群とディスレキシア群では、知能をコントロールした場合でも、読字能力および2種の音韻認識課題の成績に有意差を認めた。中でも、単語逆唱および母音比較課題の成績が読字能力と相関することが示された。この結果より、音韻認識障害は日本語でのディスレキシア児においても背景となる認知障害の1つであることが確認された。 <研究3:視覚認知課題>ディスレキシア児を対象に視覚認知課題(PVST)を行い、標準化された日本人健常児でのデータを用いて評価を行った。予備実験として、視覚認知障害が予測される後頭葉障害例および未熟児を対象として同検査を行い、この課題により異常を検出できることを確認している。ディスレキシア児については、現在データの蓄積中である。 その他、聴覚認知課題、眼球運動課題、自動化課題を作成しており、読字能力との比較検討を行う予定である。この中から読字能力との相関を認めた課題を用いて機能的MRI検査を行う。
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