<研究1:母音比較課題による機能的MRI> 平成17年度の研究成果により、日本語におけるディスレキシア児においても音韻認識・操作課題が不良であり、中でも母音比較課題が読字能力と相関することが明らかになった。そこで、この母音比較課題における脳活動の差異を機能的MRIを用いて計測した。被験者は15〜16歳の健常児および同年齢のディスレキシア児(全例右利き)である。鳥取大学倫理委員会の承認を得た手続きに基づき、本人および保護者よりインフォームドコンセントを得た。健常児では、中・下前頭回、中心前回、上頭頂小葉、内側前頭回に左優位の活動を認めた。一方、ディスレキシア児の初回の撮像では右優位の中・下前頭回、中心前回、上頭頂小葉が広範囲に賦活され、さらに右上側頭溝後部の活動を認めた。2回目の撮像では、左上側頭溝後部、下頭頂小葉にも活動を認めた。以上の結果より、ディスレキシア児では左半球の機能的障害があり代償的に対側の活動が増強していることが示唆された。今後、被験者を増やして検討する予定である。 <研究2:視覚認知課題> ディスレキシア児では音韻能力障害に加え、視覚認知にも障害を認めることが多いが、どのような視覚認知能力が読字能力に関連するかは明らかにされていない。平成17年度に引き続き視覚認知課題(PVST)を用い、標準化された日本人健常児でのデータを用いて評価を行った。疾患対照として、視覚認知障害が予測される後頭葉障害例および未熟児を対象とした。この結果、対照群では複数の課題において異常を認めたが、ディスレキシア児では一部に特定の課題に障害を認める症例があるのみで、これらの課題の読字能力への寄与は小さいと考えた。 この他、ディスレキシア児の眼球運動、聴覚認知課題、自動化課題について評価を行っており、読字能力との相関を認める課題を用いて機能的MRIを行う予定である。
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