高親和性IgE受容体(FcεRI)はIgEと特異的に結合し、肥満細胞、好塩基球の細胞表面に発現が認められる。健常人の末梢血単核球においてFcεRIは細胞表面に発現していない。ところがアレルギー疾患患者においてはその発現が増強されることが報告されているが、気管支喘息患者の末梢血単核球上の発現に関する報告はほとんどない。また、川崎病において末梢血単核球の活性化、血清中IgEの上昇が報告されているが、川崎病患児の末梢血単核球のFcεRIの発現についての検討は成されていない。そこで今回これらの疾患について検討を行った。 気管支喘息、呼吸器感染症、川崎病患児から末梢血を採取し、比重勾配遠心法で単核球を分離した。単離した末梢血単核球をFITC-conjugated CD14 antibodyもしくはFITC-conjugated CD4 antibodyとPE-conjugated CRA-1 antibodyもしくはPE-conjugated mouse IgG2b antibody、さらにPerCP-conjugated CD20 antibodyもしくはPerCP-conjugated CD8 antibodyで染色を行い、フローサイトメーターでそれぞれの細胞表面におけるFcεRI α-chainの発現を検討した。 気管支喘息患児においてCD14陽性細胞表面におけるFcεRI α-chainの発現についてはCD14陽性細胞数が少ない症例が多く、ばらつきが多いが若干発現が認められた。一方。CD4陽性細胞、CD8陽性細胞においては発現が認められた症例が多い傾向にあった。CD20陽性細胞についてはFcεRI α-chainの発現は認められなかった。 川崎病患児においてはCD14陽性細胞、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞表面のFcεRI α-chainの発現については症例数が少ないため現時点での評価はできないが急性期には発現がやや増強している印象を受けた。 各種呼吸器感染症に児においてはその感染の種類、感染原因、基礎疾患によるばらつきが大きく、評価困難であったが今後も症例を増やしていくことで何らかの傾向を見いだすことができるのではないかと考えている。 現時点でこれらの疾患において、単球やリンパ球においてもFcεRI α-chainの発現が増強している可能性があり、今後はさらに症例数を増やして検討していくとともに、実際にmRNAレベルで発現が増強しているかをRT-PCR法を用いて検討していく。
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