アトピー性皮膚炎患者の末梢血単球における高親和性IgE受容体(FcεRI)の発現強度が、健常者に比し有意に高いことが報告されており、川崎病において末梢血単核球の活性化、血清中IgEの上昇が報告されている。これらの報告に基づき、FcεRI α-chain、β-chainの末梢血単核球におけるmRNAレベルでの発現を健常コントロール(平均4才5ヵ月)、気管支喘息患者(平均5才5ヵ月)、川崎病患者(急性期および回復期)(平均3才4ヵ月)において検討した。なお、川崎病患者はいずれも急性期の採決後に免疫グロブリン製剤(2g/kg)の投与を受けている。 検討にあたっては健常者および患者の末梢血単核球を濃度勾配遠心法にて単離したのち、RNAを抽出してone-step RT-PCR法にて行った。得られたPCR産物を電気泳動法で検出し、内部標準(GAPDH)の発現量との比を用いて半定量的に解析した。 1)気管支喘息患者において、FcεRI α-chainのmRNA発現は健常コントロールに比しほとんど差は認められなかった。また、総IgE値とFcεRI α-chainのmRNA発現の相関関係を検討した結果、相関係数r=0.28と相関関係は認められなかった。FcεRI β-chainについては健常コントロールおよび気管支喘息患者において発現は見られなかった。 2)川崎病患者において、急性期の末梢血単核球におけるFcεRI α-chainのmRNA発現は健常コントロールと比し、差は認められなかった。しかし、回復期の末梢血単核球においては、その発現は健常コントロールと比し低下している傾向にあった(p=0.08)。FcεRI β-chainについては川崎病患者の急性期および回復期いずれにおいても発現は見られなかった。 1)については気管支喘息患者ではアトピー性皮膚炎患者に比し、総IgE値は低い傾向にあるため発現の増強が見られなかった可能性が考えられた。2)については今後症例を増やしていくことで急性期と回復期の差が明らかにされる可能性が考えられた。
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