【研究目的】 a.乳児急性リンパ性白血病における白血病細胞に発現しているマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)および内因性MMP阻害因子(TIMP : tissue inhibitors of metalloproteinases)の遺伝子の発現と細胞生物学的特徴との関連を検討することにより、MMPおよびTIMPの予後因子としての意義を解明する。さらに、従来の予後因子と組み合わせることにより、より正確な予後予測法を確立する。 b.白血病細胞株におけるMMPおよびTIMPの遺伝子発現量とタンパク量および機能との関連を検討する。 【研究実施方法-a】 (1)乳児急性リンパ性白血病における初診時骨髄細胞より腫瘍細胞を分離しmRNAを抽出、cDNAを合成する。 (2)MMP2/MMP9/TIMP1/TIMP2遺伝子各々の発現を定量的リアルタイムRT-PCR法を用いて定量する。 (3)既知の予後因子すなわち患者の性、発症年齢、診断時白血球数、診断時肝脾腫、診断時中枢神経浸潤もしくは再発の有無により、MMPおよびTIMPの遺伝子発現量に有意差があるかを検定し、白血病の臨床的特徴との相関を解析する。 【研究実施方法-b】 (1)白血病細胞株におけるMMP2/MMP9/TIMP1/TIMP2遺伝子各々の発現を定量する。 (2)白血病細胞株の細胞融解物および細胞上清におけるMMPおよびTIMPタンパク量をELISAにて測定する。 (3)白血病細胞株における組織浸潤能をBoyden chamber及びMatrigelを用いたInvasionアッセイにて測定する。 【結果】 a.白血病細胞より産生されるMMPおよびTIMPは肝脾腫や中枢神経浸潤などの髄外浸潤の成立に関与していることが示唆された(有意差あり)。 b.白血病細胞株におけるMMPおよびTIMPの遺伝子発現量とタンパク量および機能との間に一部有意な相関を認めた。
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