1.フローサイトメトリーを用いた白血病細胞内グルタチオンの定量について 目的;chloromethyl fluorescein diacetate(CMFDA)は細胞内でグルタチオン(GSH)と反応後、蛍光を発する色素であり、細胞内GSHの半定量に用いられる。白血病細胞をCMFDAで染色し、白血病細胞内GSH量をフローサイトメトリーによって測定することが可能かを検討した。方法;8種類の白血病細胞株(KG-1、K562、CCRF-HSB2、YCUB-2、YCUB-4、YCUB-5、Daudi、HEL)をCMFDAで染色し、その蛍光強度(mean fluorescence intensity)を測定した。また、DTNB-GSSG reductase法によりそれぞれのGSH濃度を実測し、CMFDA法との相関を検討した。結果;(1)CMFDAによる蛍光は、細胞ごとのバックグランドが強く、実際のGSH濃度とは必ずしも相関しないことが判明した。(2)一方、buthionine sulfoximine(BSO)によるGSH合成抑制は白血病細胞のCMFDA蛍光強度を減少させることから、in vitroにおいて同一細胞間におけるGSH量の比較にはCMFDA法は利用可能であることが示唆された。 2.小児悪性軟部組織腫瘍におけるbuthionine sulfoximineおよびfenretinideの有効性について 目的;BSOはGSHの選択的合成阻害剤であり、細胞内GSHを減量させる結果、酸化ストレスによって細胞死を誘導する。合成レチノイン酸fenretinide(4-HPR)は種々の悪性腫瘍細胞において、活性酸素産生を増強することが示されているので、理論的にBSOと4-HPRは相乗作用があると考えられる。有効な化学療法がない小児悪性軟部組織腫瘍(横紋筋肉腫は除く)において、BSOと4-HPRの併用効果を検討した。方法;2種類の悪性軟部組織腫瘍細胞(YCUS-5、YST-1)を使用し、薬剤感受性はMTT法で測定した。結果;(1)YCUS-5はBSO抵抗性だが、BSOは低濃度4-HPRの殺細胞効果を増強する、(2)YST-1はBSOと4-HPRのいずれにも感受性を示し、両者の併用は相乗効果を示した、(3)低酸素濃度下では、YST-1に対するBSOの効果は減弱するが、4-HPRとの相乗効果は保たれていた。 将来の臨床応用の基礎データを提供すべく、さらに検討を継続する予定である。
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