1:比較ゲノム解析 8番染色体長腕部(8q22.2)に位置するCohen症候群の原因遺伝子COH1の機能解明のため、本研究での主な対象であるメダカのCoh1遺伝子の解析および単離を行った。昨年度行った詳細なコンピュータプログラムによるエキソン予測などにより、各生物種におけるCOH1遺伝子のゲノム上でのサイズはヒト830kb、イヌ750kb、ラット620kb、マウス560kb、ニワトリ420kb、メダカ400kb、フグ230kb、ショウジョウバエ12kbであることがわかった。また、エキソン28の2つのバリアントのうち長いエキソン28はマウスおよびラットのみで欠損していること、鳥類からヒトまではCOH1遺伝子は62個のエキソンで構成されているが魚類においてエキソン29、34、42、61が2個に、エキソン56は3個に分断されていることが判明した。 2:ノックダウン解析 メダカ初期胚からRNAを抽出し、RT-PCRによりメダカCoh1のクローニングを行った。RT-PCRの結果からはメダカ初期胚においてCoh1の発現量は低く発生に伴い発現量が増加することが確認できた。続いて空間的な発現を確認するためクローニングしたCoh1遺伝子の3'側の部分配列を用いてメダカ初期胚のWhole-mount in situ hybridizationを行ったが明瞭なシグナルを検出することはできなかった。そこで、Coh1遺伝子の複数ヶ所にモルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)を設計し、メダカ胚へのマイクロインジェクションによりノックダウン解析を行った。他の遺伝子のノックダウン解析で文献に記載されている濃度でインジェクションを行った場合は、配列を一部置き換えたコントロールMOでも発生の遅れが見られたため、低濃度条件でインジェクションした。その結果、極少数の胚で発生の遅延や形態不全が見られた。
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