テロメレースは逆転写酵素の1つで、染色体末端のテロメア配列を伸長させることにより細胞の分裂寿命を延長したり、テロメア配列の損傷修復を行い、染色体の安定化を図る役割を持っている。テロメレース活性を制御しているhTERT (human telomerase reverse transcriptase)遺伝子を白血病細胞株K562に導入すると、特にDNA損傷を与える抗腫瘍剤や放射線に対して耐性を持つことを報告しており、逆にテロメレース阻害剤を腫瘍細胞に用いることにより、分裂停止や抗腫瘍剤の効果を増加させることが期待される。 本研究課題では、小児腫瘍特に網膜芽細胞腫でのテロメレース阻害剤の抗腫瘍効果について検討を行った。網膜芽細胞腫細胞株Y79とWeri-RB1ではhTERT mRNAと蛋白ともに発現しており、強いテロメレース活性を認めた。さらに細胞質と核分画共にテロメレース活性は発現していた。テロメレース阻害剤を作用させると細胞増殖抑制さらにはアポトーシスが誘導された。この時、テロメレース活性は早期に抑制されていた。DNA microarrayで遺伝子変化を解析することにより作用機序の検討を行った。網膜芽細胞腫細胞においてテロメレース活性を阻害することにより抗腫瘍効果が得られることが明らかとなった。現在さらに網膜芽細胞腫におけるテロメレース阻害剤の抗腫瘍剤としての至適条件を検討している。
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