我々のおこなってきた研究では、アンジオテンシンII受容体抑制による抗腫瘍効果はマクロファージを介する炎症機序が抑制されるために引き起こされることが示唆された。詳しいメカニズムを解明するために、マクロファージの遊走に重要な役割を果たしているMCP-1 (monocyte echemoattractant prorein-1)の強力な阻害遺伝子である7ND遺伝子を導入したモデルを用いて抗腫瘍効果を検討した。melanoma細胞を用いて検討した。(A)Wild typeマウス(WT)群、(B)WT+7ND導入マウス(7ND)群にわけ、それぞれ腫瘍細胞を皮下投与し、腫瘍増殖を検討した。結果は、7ND群で有意に腫瘍増殖が抑制され、F4/80抗体を用いた免疫染色にて7ND群で有意に組織中のマクロファージが減少しており、ELISAでも7ND群でMCP-1が減少しており、腫瘍増殖においてマクロファージが重要な役割を果たすことが分かった。また、腫瘍増殖後の抗腫瘍効果を見るために同様にマウスmelanoma細胞が増殖したマウスを2群に分け(A)Wild typeマウス(WTα)群、(B)WT+7ND導入(7NDα)群、とし腫瘍増殖を検討した。結果は腫瘍増殖後の7ND投与でも有意に7NDα群で腫瘍増殖を抑制できた。 他の腫瘍細胞でも検討を行ったが同様に7ND投与にて腫瘍増殖が抑制され抗腫瘍効果が確認された。 このことから、マクロファージを介した抗腫瘍効果は非常に有効なものであり、今後7NDタンパクを作成することで遺伝子治療が可能と考えられ今後検討を進めていく予定である。 アンジオテンシンII受容体ノックアウトマウスにおいて内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現がmRNAレベルで著明に抑制されていることから、次に腫瘍増殖におけるeNOSの関係を検討した。 (A)Wild typeマウス(WT)群、(B)eNOS欠損マウス(eNOS)群、(C)WT+L-NAME投与群にわけ、それぞれマウスmelanoma細胞を皮下に接種し腫瘍増殖を比較した。WT群とeNOS群の比較においてeNOS群で有意に腫瘍増殖が抑制されたが、eNOS阻害薬であるL-NAME投与群ではWT群と有意差は認めなかった。このためL-NAMEの投与量を増量し再検討したところL-NAME投与群とWT群との有意さを認めた。今後の臨床応用が可能であるか検討を進めていく予定である。
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