研究概要 |
絨毛外トロフォブラスト(EVT)の機能異常が流産や妊娠中毒症など妊娠維持機構の破綻と考えられる疾患の病態形成に関わっていることから、EVT機能分化は生理的妊娠の成立と維持に深く関与していると考えられている。EVT分化の制御機構はいままで不明であったが、我々はこれまで脱落膜や子宮内膜に存在する液性因子が細胞外マトリックスとの相互作用のもとでEVT分化を制御している可能性を明らかにしてきた。 そこで、本研究ではEVTの細胞分化にかかわる因子を決定するとともにこれがEVTにもたらす遺伝子変化を明らかにすること、さらにその生物学的意義をin vivoで検証すること、を目的とした。 今年度は、 1)液性因子による血管内皮特異的integrin分子発現の変化とその生物学的意義をリアルタイムPCR、RTPCR、免疫ブロットならびに免疫染色を用いて、 2)マトリゲル添加培養時のtube-like formationにおける遺伝子変化についてDNAマイクロアレイを用いて、 ヒトEVT不死化細胞株TCL1において、それぞれ検討した結果 1)TNFα、VEGFは血管内皮特異的なintegrin αVβ3サブユニットの発現を誘導するとともに、これらのサブユニットからのシグナルは血管内皮分化および細胞死の制御に関わること、 2)TCL1細胞が血管内皮様の形態変化にともなってHIFの上流に存在し低酸素状態で誘導されるユビキチン関連タンパクSIAH1発現が誘導されること が、明らかとなった。 以上よりTNFα,VEGFとintegrinによるシグナルが胎盤形成におけるEVTの浸潤のみならず血管内皮への分化制御にも関わると考えられ、また酸素濃度等による調節機構が存在することが示唆された。
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