今年度は、主としてケモカイン遺伝子の線維化に及ぼす影響を検討した。全身性強皮症でみられる線維化過程には、血管内皮細胞障害、炎症細胞浸潤、サイトカインやケモカインの放出などが複雑に関与している。この全身性強皮症でみられる線維化過程を解明するためには、適切な線維化モデル動物が必要であるが、以前我々は、マウス皮下にサイトカインを注入するのみで線維化を誘導するモデルマウスの作製に成功している。すなわちTransforming growth factor(以下TGF)-β単独投与では一過性の線維化しか誘導されないが、TGF-βに続けてConnective tissue growth factor(以下CTGF)を皮下投与した場合には持続的な線維化が誘導されることを見いだしている。今回は、TGF-β単独投与で形成された肉芽組織とTGF-βに続けてCTGFを皮下投与して生じた肉芽組織中のケモカイン遺伝子の発現量をreal-time PCR法を用いて比較検討した。その結果、macrophage inflammatory protein-1αの発現量に有意な差は認めなかったが、macrophage chemoattractant protein-1(MCP-1)の発現量は約4倍に増加していた。この結果を受けて、MCP-1の発現の欠損しているMCP-1ノックアウトマウスにTGF-βとCTGFの皮下注射を行い、線維化が誘導されるかどうかを今後確認する予定である。また今回、サイトカイン刺激後の培養線維芽細胞におけるI型コラーゲンα2鎖遺伝子発現量の検討も行った。その結果、48時間後I型コラーゲンα2鎖遺伝子発現量はTGF-β単独添加群と比較して、TGF-β及びCTGFの同時添加群では約2.5倍に増加することを見いだした。したがって来年度以降、TGF-β単独添加群とTGF-β及びCTGFの同時添加群の遺伝子発現量の差を、DNAマイクロアレイ法を用いて検討する予定である。さらに、DNAマイクロアレイ法の結果で発現に差がみられた遺伝子を、モデルマウスを用いて線維化に関連する遺伝子であるかを確認する予定である。
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