前年度に引き続き、TGFβとCTGFで誘導される線維化へのサイトカイン、ケモカインおよびその受容体の関与を検討するため、培養ヒト線維芽細胞にTGFβあるいはTGFβとCTGFを添加し、4時間後と24時間後の遺伝子変化をDNAマイクロアレイ法で比較検討した。DNAマイクロアレイ法は各遺伝子において少なくとも2つ以上のプローブを用いて検討し、その結果はTGFβ単独投与群とTGFβとCTGF投与群を比較して3倍以上の増減を有意と判定した。24時間後の時点ではIL-4が6.5倍、FGF-1が4.2倍、CCL17が7.7倍、CX3CR1が3.0倍の増加を認め、逆にCXCR11は0.16倍、CCL5は0.18倍に減少した。これらの遺伝子は4時間後には有意な変動を認めなかった。また、TNF-α、HGF、IGF、VEGF、PDGF、EGFは4時間後も24時間も有意な増減はみられなかった。次に、DNAマイクロアレイ法の結果を確認するため、24時間後のIL-4、CCL17、CX3CR1 mRNA発現量をノーザンブロット法で検討したところ、TGFβとCTGF投与群がTGFβ単独投与群に比べいずれの遺伝子も2倍程度の有意な増加を認めた。 そこで、変化のみられたCX3CR1(fractalkineの受容体)に着目し、in vivoでの線維化抑制実験を試みた。すなわち、CX3CR1欠損マウスにTGFβを3日間、続けてCTGFを4日間皮下投与することにより線維化誘導実験を行った。その結果、CX3CR1欠損マウス8日目の組織中のコラーゲン量は、野生型マウスと比較して減少傾向がみられた。また、8日目の組織中マクロファージ数を検討したところ、CX3CR1欠損マウスにおいて有意な減少を認めた。この結果より、CTGFによる線維化の維持にCX3CR1が関与している可能性があると結論づけた。
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