研究概要 |
まず、過去に我々がDNAチップと遺伝子データーベースを用いて同定した、ヒトメラノーマ、ヒトメラノサイト、およびヒトB細胞に特異的に発現され、複数のメラノーマ患者血清中のIgG抗体に認識される新規抗原FCRL(M266)のマウスホモログ(mFCRL)が、マウス生体内でもヒトと同様の組織特異的発現パターンを示し、マウスメラノーマB16およびマウスB細胞リンパ腫細胞株A20に強く発現されることがRT-PCRにて確認できた。そこでmFCRLでマウスを免疫することで、A20等のmFCRL発現細胞に対する強い免疫反応が惹起できるかを調べた。我々が確立した、樹状細胞への効率よい抗原導入を可能とするprotein transduction domain (PTD)を融合させたmFCRL蛋白で感作したマウス骨髄由来樹状細胞により免疫されたマウスの脾細胞は、A20を選択的に認識してIFN-γを分泌し、殺傷した。また免疫マウスの生体内にはmFCRL特異的抗体産生がみられた。そこで、mFCRLワクチンの実際の生体内での抗腫瘍効果を検討するため、同様の方法で免疫したマウス皮内にA20を接種し、腫瘍増殖抑制効果を検討したところ、非免疫マウスに対して有意な(P=0.008)腫瘍増殖抑制効果が認められた。FCRLは様々なヒトB細胞系悪性腫瘍に広く発現されていることが最近,他のグループにより明らかにされており、FCRLはB細胞リンパ腫へのワクチン療法の標的となり、その抗腫瘍効果にはFCRL特異的CTLが強く関与していることが示唆された。
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