研究概要 |
本研究は造血幹細胞移植における急性GVHDを組織学的に他の皮膚症状(薬疹、ウイルス疹など)と鑑別可能かどうか指標となるものを網羅的に探索しようというものである。一般的には他の皮膚疾患との鑑別が困難であるとされるGVHDの診断精度を高め、臨床に貢献できることを目指している。 1.急性GVHDでは、single cell necrosisあるいはsatellite cell necrosisといわれるように個々の表皮細胞がrandomにapoptosisを引き起こす。ところがGVHDと診断された症例の中には、移植前に強力な化学療法(前処置)を施行しているので、それによる表皮角化細胞の壊死がGVHDの反応として誤って解釈されている、つまりGVHDとしてのover-diagnosisされている例が混在している可能性もある。どちらの細胞もHE染色では好酸性に染色される細胞(dyskeratotic cell)として認識され区別がつかない。一般的には個細胞壊死といわれるが本来はdyskeratotic cellはapoptotic cellであり、GVHDの際にeffecter cellのターゲットになりやすい角化細胞が存在するということが推測されている(selectively targeted apoptotic cells, STAR cells)(Biol Blood Marrow Transplant 10:357, 2004)。現在、STAR cellsに関連してある仮説をたてて、化学療法の影響によるapoptosis(regimen-related toxicity, RRT)とGHVDとしてのapoptosisが区別できないかどうか検討中である。 2.移植後に好酸球が毛包に浸潤して生じる皮疹はeosinophilic folliculitis(EF)としてGVHDとは区別されて報告されている(Am J Hematol 76:295.2004)。また、好酸球の浸潤が目立つ皮疹で特に毛包、付属器優位の浸潤を示さないものはGVHDあるいは薬疹として診断されることが多い。このような好酸球浸潤が目立つタイプについて、GVHDと診断してよいのか、あるいは別の疾患概念としてとらえるほうがよいのか組織学的に検討している。
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