すでに我々はEGFR遺伝子の詳細な解析により、その転写調節領域(プロモーター)に乾癬患者特異的なDNAメチル化の異常を同定している。この領域のメチル化は転写因子AP-2の親和性を変化させることにより、EGFR発現調節を制御していることも報告した。これらの結果は、我々がin vitroで検討した乾癬ケラチノサイトにおけるEGFR発現異常のメカニズムを遺伝子レベルで支持するものであった。 平成17〜18年度にかけて、上記で同定された遺伝子群のメチル化異常が、実際に個々の遺伝子発現に及ぼす影響を検討してきた。メチル化依存的に生じる転写活性の違いを遺伝子ごとに測定し、これらを遺伝子間で比較することにより、乾癬の皮疹形成や臨床像の違いに関わる遺伝子の重要性の位置付けを試みた。その結果、EGFRのみならず乾癬で発現異常が報告されている他の遺伝子群の幾つかは、そのプロモーター領域でのメチル化異常を来たしている可能性が高いことが分かった。 今後はメチル化の違いによる疾患標的遺伝子の更なる絞込み、患者の家系内で検討、ならびに患者自身と一致したDNAメチル化パターンの遺伝性の有無や浸透性について検索すると同時に、個々の異常メチル化遺伝子、および特定のプロモーター部位を標的にした迅速、かつ簡便なin vitroでのメチル化同定方法の確立を試みる。
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