グラニュライシンは、ヒトのキラーT細胞やナチュラルキラー(NK)細胞に存在する顆粒タンパクの1つであり、近年その抗腫瘍効果が明らかにされ、悪性腫瘍の治療の一端を担う可能性が示されている。また、グラニュライシンには、結核菌やブドウ球菌など微生物に対する殺菌作用があることも知られており、治療への応用が期待される。 昨年は、ヒト末梢血単核球からLAK細胞を誘導し、cDNAを合成後、pET28aベクターのNde1サイトに増幅した238bpをクローニングし、E.Coli B株由来Rosetta(DE3)にヒスチジン融合蛋白として発現させる方法を試みたが、グラニュライシンの発現量は少なかった。 本年度は、昨年度の結果を基に、まずグラニュライシン発現量を増加させることに主眼をおいて検討を行った。合成DNAを用い、コドンユーセージを大腸菌のコドンに最適化することで、大量発現が可能となった。封入体として得た蛋白を塩酸グアニジン溶液にて可溶化し、Ni-NTAカラムを用いて精製した。リーフォーデイング後、Salmonella typhimuriumに対する抗菌活性を指標に活性を検討したが、これには抗菌活性は認められなかった。そこで、次に可溶蛋白として発現させる為、GST(Glutathion S-transferase)との融合蛋白による発現を試み、可溶蛋白としての発現に成功した。現在、グルタチオンセファロースカラムにて精製し、抗菌活性を検討すると共に、S-S結合が構築できる新しい発現しシステムについても併せ検討している。
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