研究概要 |
サブスタンスPは、末梢神経性の痒みの軸索反射に関与する起痒物質の一つである。アトピー性皮膚炎の病態に関与する各種サイトカインやサブスタンスPなどの化学伝達物質に対して、抗アレルギー剤がどの様に作用しているかは、解明されていない点が多い。今回我々は、アトピー性皮膚炎患者に各種抗アレルギー剤を投与し、治療開始時と投与後2週間の2点で皮疹重症度と末梢血中の既知の各種マーカーおよびサブスタンスP,可溶性(soluble ; s) ICAM-1,sVCAM-1,sE-セレクチン,sIL-2RおよびIL-18を測定した。抗アレルギー剤はセチリジン、エピナスチン、オロパタジンそしてフェキソフェナジンを使用した。その結果、すべての抗アレルギー剤において皮疹の改善と相関し白血球数,好酸球数,sVCAM-1,sE-セレクチンおよびsIL-2Rが優位に低下した。しかしサブスタンスPは、臨床症状が改善しているにもかかわらず、抗アレルギー剤によって3つのパターンに分類できた。1つはサブスタンスP値が上昇するグループで、これにあてはまる薬剤は、セチリジンとフェキソフェナジンであった。これら薬剤は、神経ペプチドのレセプターをブロックすることによって血中濃度を上昇すると考えられた。2つめのグループはサブスタンスP値が低下するグループで、これにあてはまる薬剤はオロパタジンであった。本剤にはサブスタンスP分泌抑制作用に加えてレセプターの増加などのサブスタンスP代謝亢進の機序も生じていることが予測された。3つめのグループはサブスタンスP値の変動がないグループである。これにあてはまる薬剤はエピナスチンであった。本薬剤にはサブスタンスPのレセプターブロック作用はなく、また産生抑制作用もないことが推察された。本研究は抗アレルギー剤の持つ抗ヒスタミン作用以外の作用機序を明確にするものである。
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