抗アレルギー剤のもつ抗ヒスタミン作用以外の免疫調整作用は多種多様である。我々はこれまでに抗アレルギー剤をポジショニングする上で、表皮におけるケラチノサイトおよびランゲルハンス細胞に注目し、それぞれに対する抗アレルギー剤の持つ免疫調整作用に報告してきた。アトピー性皮膚炎(以下ADと略す)患者では末梢性の痒みはマスト細胞の産生するヒスタミンがC線維を刺激することで生じるが、このときにC線維からサブスタンスP(SP)に代表される神経ペプチドが産生される。SPの産生・遊離を抑制することは、痒みの悪循環および痒み刺激伝播の遮断につながる。今回我々は、抗アレルギー剤とSPの関連に注目した。対象及び方法:重症度が中等症までの24名のAD患者を対象とした。ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤および保湿剤の外用療法に加えて、4種類の抗アレルギー剤を内服併用した。内服開始時および内服開始2週間後に皮疹重症度の判定と採血を行い、ADの各種血中マーカーおよび血中SP値を測定した。結果:治療開始して2週間後の血中マーカーの推移では好酸球数、sIL-2R、sE-selectin、sVCAM-1、が有意に低下を示した。血中SP値の推移は、血中SP値を上昇させるグループと低下させるグループに大別できた。前者は塩酸セチジリン、塩酸フェキソフェナジンそして塩酸エピナスチンであった。対して、後者の結果を示したのは塩酸オロパタジンのみであった。これまでに当教室から報告した抗アレルギー剤の抗ヒスタミン作用以外のイベントに今回の血中SP値に対する作用を加えて、"抗アレルギー剤のポジショニング"と称して、抗アレルギー剤を抗ヒスタミン作用以外の免疫調整作用の点から分類・整理を行った。これらの結果は、発症メカニズムや患者の症状などに合わせた抗アレルギー剤の選択において重要なデータとなり得る。
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