研究概要 |
今回我々は、ノルエピネフリントランスポータ(NET)およびセロトニントランスポータ(5-HTT)の遺伝子多型が、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)のひとつであるミルナシプランの治療反応性におよぼす影響を検討した。 秋田大学医学部倫理委員会にて研究計画の承認を得た。患者に対しては研究の目的と内容を説明し、研究参加についての同意を得た。大うつ病性障害(DSM-IV)と診断され、Montgomery and Asberg depression rating scale(MADRS)の得点が21点以上の患者96名が試験に導入された。ミルナシプランを1週目まで50mg/day、以降は100mg/dayの用量で6週間にわたり投与し、抑うつ症状の変化をMADRSを用いて評価した。PCR法を用いて遺伝子型(NET T-182C,NET G1287A,5-HTTLPR,5-HTTVNTR)を決定し、高速液体クロマトグラフィーを用いてミルナシプランの血中濃度を測定した。 80名の患者が試験を完了した。NET T-182C多型においては、responder群とnonresponder群との間で遺伝子型分布(p=0.03)および対立遺伝子頻度(p=0.03)の両者に有意差がみられ、T型対立遺伝子の存在が優れた抗うつ効果に関与していることが示された。NET G1287A多型においては、A/A遺伝子型患者では抗うつ効果の発現が遅れることが示された。これらの結果とは対照的に、5-HTTLPRおよび5-HTTVNTR多型は抗うつ効果に有意な影響をおよぼさなかった。血中濃度と治療効果の間に有意な関連はみられなかった。NET遺伝子多型はミルナシプランの抗うつ効果予測因子となり、5-HTT遺伝子多型は予測因子とならないことが示された。
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