我々は、「大うつ病性障害(DSM-IV)と診断され、Montgomery and Asberg depressio nrating scale(MADRS)の得点が21点以上の患者を試験に導入する。ミルナシプランを1週目まで50mg/day、以降は100mg/dayの用量で6週間にわたり投与し、抑うつ症状の変化を漁DRSを用いて評価する。PCR法を用いて遺伝子型を決定し、治療効果との関連性を検討する。高速液体クロマトグラフィーを用いてミルナシプランの血中濃度を測定し、薬物代謝の個人差と治療効果との関連性を検討する。」という計画に基づき、サンプルの収集および得られた解析の結果を進めた。 抗うつ薬の直接的標的分子は神経伝達物質のトランスポーターや受容体、代謝酵素と多様であるが、このような直接的標的分子の差異にかかわらず、抗うつ薬は最終的に共通の分子を活性化または不活性化させ、それが抗うつ効果の発現に関与するという知見が得られつつある。このような分子の代表と言えるのが、神経細胞の生存に大きな役割を果たしている脳由来神経栄養因子(BDNF)である。我々は、BDNFG196A多型とミルナシプランの抗うつ効果との関連性を検討した結果、G/A遺伝子型が良好な抗うつ効果と関連していることを示した。また、既存のフルボキサミン投与患者サンプルにおいても同様の検討を行ったところ、同様の結果が得られた。すなわち、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるミルナシプランと選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるフルボキサミンという、直接的標的分子が同一ではない抗うつ薬のいずれにおいても、BDNF G196A多型のG/A遺伝子型が良好な抗うつ効果と関連している可能性が示された。
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