研究概要 |
1.Periodically rotated overlapping parallel lines with enhanced reconstruction (PROPELLER)法の最適化.→正常被検者および神経疾患患者において,PROPELLERの最適化と特徴の把握を完了した.この方法論の特に有利な点は,超高速撮影法であるEPIを用いた場合に,しばしば画像ゆがみを生じる側頭葉内側部・腹側部においても,定量評価に耐えうる拡散強調画像を取得できることである.また大脳基底核,視床,脳幹などの脳中心部は,特にシグナルノイズ比が高く,有利性が高いことが判明した. 2.MRI撮影の前に,以下の尺度や検査を用いて患者の精神状態を定量評価する. Positive And Negative Syndrome Scale (PANSS), Repeatable Battery of Neuropsychological Assessment (RBANS)→上記評価の信頼性向上のため,複数の評価者での評価訓練を実施し,精神症状と認知機能の精密な測定の準備が完了した. 3.平均週1から2名のペースで実験を行う,高速スピンエコー法による構造画像,これまで使用してきた超高速撮影法EPIによる拡散強調画像,PROPELLER法による拡散強調画像の順で行う.年齢・性・教育歴などをマッチさせた健常ボランティアの撮影もあわせて行う. 4.1年間のデータを使って,脳の結合性指標を患者と健常ボランティアで比較する.さらに,各臨床変数と,拡散テンソル解析から得られた結合性指標との相関を統計解析する.→次ページにあげた論文を,欧州の専門誌に発表した.超高速撮影法EPIを用いた慢性期統合失調症の研究であるが,予想通り,経過が長く陰性症状の強い患者群では,前頭葉白質の異常が存在することが分かった.今後はPROPELLER法による拡散強調画像を組み合わせ,かつ対象を初発の比較的経過の短い患者群に絞って検討する予定である.すでに数名の撮影は完了しているが,初発患者の場合は,異常がより軽微なようである.したがって単一の方法論では異常を同定しがたい可能性があり,PROPELLER法に加えて,物質代謝も測定できるMRS法も導入する.
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