研究概要 |
本年度は主に、磁気共鳴画像(MRI)を用いて統合失調症患者、統合失調型障害患者、および健常者の脳形態を横断的に比較した。 1.statistical parametric mappingを用いたボクセル単位解析法により統合失調型障害患者と統合失調症患者それぞれ25例を健常者50例と比較したところ、健常者群と比較して統合失調型障害群では左の下前頭回、島回、上側頭回、内側側頭葉の灰白質が減少していた。統合失調症群では、これらの領域に加えて両側の前部帯状回を含む内側前頭葉領域の灰白質減少が顕著で、右の下前頭回や内側側頭葉および左の背外側前頭葉領域にも変化が及んでいた(Kawasakiら、2004)。これらの結果から、前頭葉の侵襲が顕著な精神病症状発現と関連する可能性が示唆された。 2.関心領域法により統合失調症患者58例、統合失調型障害患者26例、および健常者61例の前部帯状回吻側部体積を比較したところ、統合失調型障害患者の前部帯状回吻側部体積は健常者と統合失調症患者の中間的な値を示し、また統合失調症患者と同様に、健常者にみられる女性>男性の性差が消失していた(Takahashiら、2004a)。これらの結果から、統合失調型障害患者では統合失調症患者と一部共通の,しかし程度としては軽度の脳形態変化がみられることが示唆された。 3.関心領域法により統合失調症患者58例と健常者62例の島回体積を比較したところ、統合失調症患者における両側島回の有意な体積減少、および島回体積と罹病期間の負の相関を認めた(Takahashiら、2004b)。これらの結果から、統合失調症患者における進行性の島回体積減少が示唆された。
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