研究課題
本年度は研究協力者との共同作業により、これまでに見出した染色体異常を伴う統合失調症患者の染色体異常部位の解析を進めた。染色体の核型は46,XX,t(3;9)(q21;q22)がGバンド染色法により明らかになっていたが、FISH法により46,XX,t(3;9)(q13.12;q21.31)と、より詳細に染色体異常が生じている部位の特定を行った。更に、実際の切断箇所の遺伝子配列を知るために、Fish法による絞込みが行われている。切断点のうち、3番染色体に関しては染色体の転座により直接障害を受けた遺伝子は存在していないことが明らかになっている。9番染色体に関しても障害部位の特定を進めているが、未だ詳細な絞込みには至っていない。染色体の障害は周辺遺伝子の転写に影響を及ぼすことが考えられるため、患者・家族の検体を用いた遺伝子発現を解析し、健常者との比較を行う予定としている。また、引き続き我々は、当初の研究計画に則って染色体異常を伴う統合失調症患者を見出す努力を続けている。今後更なる染色体異常患者を特定するには、漫然と患者にあたるのではなく、染色体異常をともなう際に生じやすいと考えられる外見上の特徴、例えばMinor physical anomalies(以下、MPAs)に注目して患者の選別を行っている。MPAsは、顔面、眼、耳、口、手足の発達過程における形態形成の微細なエラーによっておこり、それら器官は、脳と同様の発達起源であるため、MPAsは早期の神経発達の異常を反映するものと考えられている。
すべて 2006
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J Comp Neurol 497
ページ: 436-450
Molecular Psychiatry 11
ページ: 150-157