本研究の目的は、統合失調症患者の大脳基底核に対する定型抗精神病薬(定型薬)、非定型抗精神病薬(非定型薬)の効果の差異を、精神症状評価、錐体外路症状評価、構造的MRI研究にて確認し、その分子的背景を動物モデルにて解析することである。抗精神病薬の効果を明らかにするため、まず初発統合失調症患者に対して、ベースラインのMRI撮影を行い、非定型抗精神病薬による6ヵ月の治療後の大脳基底核の容量変化を測定した。初発症例は12例の測定が可能であったが、6ヵ月後に非定型薬の同一処方でコントロール出来た症例は、同意の撤回や病状の悪化による単剤治療の継続不能などによる脱落例が多く、6ヶ月間の研究を完了できた例は4例と少なくなった。4例での検討では、半年間の非定型薬による治療は大脳基底核には変化を及ぼざなかった。我々はさらに、定型薬にて治療を行われている慢性期の統合失調症患者を非定型薬単剤に切り替えることで基底核容量の変化を確認し非定型、定型抗精神病薬治療の効果を確認しようとしているところである。このために、入院中の定型薬にて治療されている慢性期の統合失調症症例を非定型薬単剤に置換することで精神症状と錐体外路症状、大脳基底核の変化を確認しようとしている。また、本年度後期から非定型薬の大脳基底核への直接的効果が定型薬の効果と異なるかどうか、定型薬であるハロペリドールとリスペリドンをラットに飲用させ、大脳基底核を様々な神経特異的抗体を用いて免疫組織染色で染色する動物実験を始めているが、結果はまだでていない。
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