研究概要 |
同時的複式物体弁別課題では,まず,オペラント箱の側面に設置された二つのパネル上に視覚刺激を提示した.ラットが正刺激の真下にあるレバーを押せば,背面にある報酬受け皿上に落とされる餌ペレットを得ることができた.負刺激を選択した場合,室内の明かりが10秒間消される.正刺激と負刺激が二つのうちのどちらのパネル上に表示されるかは,試行毎にランダムとした.次の試行では,先の試行で用いた視覚刺激とは異なる視覚刺激についての弁別を同様の手続きで行った.このように3対の視覚刺激についての弁別を,15秒の試行間間隔で1日1セッション,60分間遂行させた.学習基準は80%以上の正反応率が3セッション連続することとした.統制課題としては,視覚刺激の弁別を必要としない,レバー押しを伴う反応課題を用いた.統制課題では,パネルに提示される視覚刺激がなんであれ,レバー押しをすれば報酬を得ることができる.学習基準到達後,ガイドカニューレの嗅周皮質への埋め込み手術を行った.術後,各課題を遂行させ,課題遂行前,遂行中,遂行後の細胞外液を,マイクロダイアリシス用プローブより回収,高速液体クロマトグラフィーにて分離し電気化学検出器を用いて,アセチルコリンの量を測定した.測定は,エゼリンを含む人工脳脊髄液で3時間灌流後にベースラインを1時間測定し,約1時間の同時的複式物体弁別(または統制課題)を行わせ,さらに2時間測定を行った.サンプルは20分ごとに回収した.同時的複式物体弁別課題を遂行中のラットにおいて,特異的にアセチルコリン量が増加している可能性については,現在さらに例数を増やし検討中である.
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