【目的】がん患者による精神的負担に関する認識と、精神的ケアヘの抵抗感を明らかにする。 【対象】東海大学医学部付属病院呼吸器内科外来通院中の肺がん患者で、がんの診断が確定し、その旨告知されている患者とした。 【方法】文書によるインフォームド・コンセントが得られた患者に対して、本研究において開発した精神的ケアへの抵抗感に関する自記式質問票の記載を依頼するとともに、がん患者でかつうつ病を呈する仮想症例を用いた構造化面接を行った。 【結果】62名をサンプリングし、50名の適格例を得た。患者背景は平均年齢64歳、女性11名(22%)、非小細胞肺がんが39名(78%)、5名にがん罹患後の大うつ病エピソードを認めた。仮想症例の状態について、うつ病と正答した患者は6名(12%)であった。仮想症例への援助になる人物としてがんの主治医(44名(88%))を挙げた患者が多かった。援助になる薬物として抗うつ薬を挙げた人は18名(36%)であった。また、頻度の高い精神的ケア抵抗感として、主治医への相談への抵抗感では、主治医には時間がない(54%)、主治医は精神的負担を尋ねない(50%)、精神科受診への抵抗感では、自分に必要かわからない(42%)、何をしてくれるのかわからない(40%)、精神に作用する薬物への抵抗感では、よくならない(68%)、自分に必要かわからない(58%)、カウンセリングヘの抵抗感では、自分に必要かわからない(56%)、カウンセリングでは軽くならない(44%)などが頻度が高かった。 【考察】がん患者において、うつ病に関する認識は低く、医学的対応が必要な状態とも認識されていないことが示された。円滑な精神的ケアの提供にあたっては、十分な情報の提供などによって精神的ケアヘの抵抗感を解消する必要である。
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