本研究の目的は、痴呆性高齢者を訪問調査して、生活環境を把握した上で本人の診察と家族への面接を実施し、医学的かつ客観的にどのような福祉サービスが必要かを判断すること、アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆とで症状の臨床的特徴から必要な社会資源にどのような違いがあるかを考察することである。対象は平成10年度に新潟県糸魚川市において抽出した痴呆性疾患を有する65歳以上の在宅高齢者である。 本研究は疫学調査の要素を含んでおり、「疫学調査に関する倫理指針」(平成14年文部科学省・厚生労働省告示第2号)及び平成14年6月17日付け14文科振第123号文部科学省研究振興局長通知に定める細則に沿って、東京慈恵会医科大学の倫理委員会の審査を受け、承認を得た。また、糸魚川市の市役所、保健所、医師会に調査の実施に際しての協力を依頼し、賛同を得た。 調査内容として、同居家族の有無・日常生活の範囲・日常生活動作能力・既往歴・現病歴・現在加療中の疾患・痴呆の重症度・介護保険の要介護認定の有無・利用している福祉サービス・客観的に必要な福祉サービスなどを把握できるように調査票を作成した。 平成10年度の調査で痴呆性疾患を疑われた高齢者のうち、生存者は266名であった。対象者とその家族に対し、本研究の目的、方法、意義、及び対象者への人権保護の配慮(守秘義務等)について十分に説明した文書と調査への協力の依頼状を送付し、賛同を得られた場合に戸別訪問を行った。本年度は111名の痴呆性高齢者を調査することができた。 精神科医師と保健師が対象者宅を訪問し、対象者を診察し、家族に面接して、調査票に従って調査を進めた。その際には住居を見学し、生活環境やかかりつけ医師の有無なども把握するようつとめた。訪問調査の終了後には各対象者に現在の治療状況・介護状況・生活上の注意点などについて、精神科医師の立場から言及した結果通知書を送付した。
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