健常者およびアルツハイマー病患者を対象に、活性型ミクログリアへの結合を反映するとされる末梢性ベンゾジアゼピン受容体リガンド[^<11>C]DAA1106を用いたPET動態計測を行い、受容体結合能の定量法を確立した。まず、シミュレーションを行い、Nonlinear Least Squares法(NLS)で受容体結合能(BP)および分布容積(DV)を、Graphical Analysis法(GA)、Multi Linear Analysis法(MA)でDVを求め、ノイズと推定精度の関係を調べた。その結果、GA、MAに比べてNLSはノイズの影響を受けやすく、ノイズの増加に伴いパラメータの標準偏差が増大するが、バイアスが小さく、前頭葉等の比較的広い領域では精度良くBPを推定できることが分かった。一方、GA、MAは、ノイズの増加とともに推定値が過小評価あるいは過大評価され、バイアスが大きくなることが分かった。また、GA、MAの式は平衡に達した場合にのみ成り立ち、用いるデータ範囲によって推定値が大きく変わるため、平衡に達するのが遅い[^<11>C]DAA1106には適さないことが分かった。次に、実際のPET画像に対しいくつかの関心領域を選択し、NLSでBPおよびDVを、GA、MAでDVを推定し、各手法による定量値を比較検討した。その結果、DVは各手法間で良い相関を示したが、実際に結合能評価に用いられるBPとDVは、どの方法においても相関が見られなかった。GA、MAで得られるパラメータはDVのみであるが、DVは動脈と脳組織間の移行を表すK_1、k_2とBPを含む複合パラメータであり、K_1、k_2の個人差等の影響を受ける。以上より、平衡に達するのが遅くてもBPを求めることができるNLSを用いることで、[^<11>C]DAA1106による末梢性ベンゾジアゼピン受容体の結合能を定量することができた。
|