アルツハイマー病に特徴的な脳病理所見は、アミロイドβ蛋白を構成成分とする老人斑およびタウ蛋白を構成成分とする神経原線維変化の蓄積である。これらの病理像を生体画像化する目的で、Aβおよびタウ蛋白に対する結合親和性に優れたPETプローブを新たに開発した。昨年度までの研究で、BF-227がアミロイドβ蛋白への結合親和性が高く、脳血液関門透過性に優れていることを明らかにした。そこで今年度は、このBF-227の^<11>C標識体を用いて、PETによる探索的臨床試験を実施した。健常人8名(うち若年者3名、高齢者5名)とアルツハイマー病患者9名を対象として東北大学で臨床PET studyを実施した結果、アルツハイマー病患者において、老人斑の好発部位である大脳皮質領域での[^<11>C]BF-227の集積を認め、健常高齢者とは対照的な画像所見を示した。ダイナミック撮像データおよび採血データを用いて定量解析を行ったところ、アルツハイマー病患者では、側頭葉外側部を中心とする大脳皮質の各領域において分布容積値が有意に上昇していた。以上の結果から、[^<11>C]BF-227はアルツハイマー病の脳病理像を生体画像化するPETプローブとしてアルツハイマー病の診断に有用であることが確認された。また、タウ蛋白を生体画像化するPETプローブ候補化合物としてBF-158、BF-170、BF-126を新たに開発し、これらの化合物が、神経原線維変化に対する高い結合特異性を示し、脳血液関門透過性にも優れていることを明らかにした。
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