昨年度はマウスの炎症モデルを用いてデオキシグルコース(DG)の取込みに関する検討を中心に行い、炎症組織内に^<14>C-DGの高集積領域と低集積領域が存在し、それぞれの領域においてcAMPによる制御機構が異なることを明らかにした。この現象は^<14>C-DG投与後、比較的後期のものであるため、本年度は^<14>C-DG投与後、早期の段階について検討を行った。さらに、炎症組織に加えて、腫瘍を対象としてFDG取込みの早期および後期画像の比較を行った。 炎症モデルマウスの尾静脈より^<14>C-DGを投与し、1分後に炎症組織および反対側の大腿部筋肉(正常組織)を摘出し、放射能濃度を測定した。また、マウスにcAMPの分解酵素であるPDE4の阻害薬であるロリプラムを予め投与し、同様の検討を行った。この結果、炎症組織における14C-DG投与1分後の取込みはロリプラム負荷により変化しないことが明らかとなった。 腫瘍におけるFDGの取込みの検討にはダブルトレーサ法を用いて、同一個体でFDGの早期および後期画像を得る試みを行った。NFSaを播種したマウスに^<18>F-FDGを投与し、さらにその29分後に^<14>C-FDGを投与し、1分後に腫瘍組織を摘出した。摘出した組織の切片(20μm)を作成し、半減期の違いを利用して^<18>Fと^<14>C、それぞれのオートラジオグラムを作成した。これより同一の腫瘍内でFDGの分布は早期と後期で大きくことなることが明らかとなった。 FDGの組織内における早期分布は主として取込み過程(血流、トランスポーター)、後期の分布はリン酸化の過程(ヘキソキナーゼ)が関与していると考えられている。組織内における早期分布と後期分布を比較することにより、FDG取込みの制御機構を明確にすることができ、さらに、薬の作用がどちらの過程に影響を及ぼしているかを検討することで、より有効な薬の開発に結びつくものと思われる。
|