アルツハイマー病(AD)の確定診断に患者死後脳の病理学的所見が必要な現状において、体外からの老人斑の画像化は有効な診断法の確立につながると考えられる。そこで本研究では、核医学的手法を用いた老人斑アミロイドのインビボ画像化を目的として、老人斑アミロイドに選択的結合性を有する新規アミロイドイメージングプローブの開発を計画した。昨年度、アミロイド凝集体への高い結合性を有するスチルベンの分子骨格をもとに、(E)-3-スチリルピリジン誘導体の開発を行った。本年度は、さらに有用な老人斑アミロイド画像化薬剤の開発を目的として、広く植物界に分布するフラボノイド化合物の一種であるフラボンの基本骨格をアミロイドイメージングプローブとして応用することを考案した。フラボン骨格に種々の置換基と放射性ヨウ素を導入したフラボン誘導体を設計・合成し、アミロイド凝集体を用いたインビトロ結合実験、正常マウス体内放射能分布実験による脳移行性とクリアランスについての検討を行った。その結果、インビトロ結合実験において、フラボン誘導体はアミロイド凝集体に高い結合親和性を有すること、正常マウス脳への高い移行性を示すことが明らかとなった。さらに、これらのフラボン誘導体は投与早期に脳へ移行した後、老人斑の存在しない正常マウス脳から速やかな消失が観察され、既報のプローブ化合物に比べ、アミロイドイメージングプローブとして優れた性質を示すことを見出した。また、アルツハイマー病患者の脳切片を用いた検討の結果、フラボン誘体はびまん性老人斑を含む老人斑アミロイドに特異的結合性を有することが明らかとなった。以上の結果より、放射性ヨウ素標識フラボン誘導体は、有用なアミロイドイメージングプローブとして機能することが示された。
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