研究概要 |
今回の研究では,時間線量率が与える放射線感受性の差異を特に照射に関連したシグナル伝達を中心に,どのような違いが生じているのかを中心に検討した.腫瘍細胞株はwild-type p53を有し照射後早期のアポトーシスを認めるNMT-1,mutant-type p53を有し照射後のアポトーシスを認めずNMT-1と比較して放射線抵抗性を示すNMT-1R,p53 functionを欠損し薬剤に関してはp53非依存性にアポトーシスを誘導するとされているU937,mutant-type p53を有しかつEGFR発現が高度であり生存シグナル伝達と放射線感受性が関連するとされるA431を用いた.現在臨床で使用している照射装置での時間線量率は100-400cGy/minであるため、今回の実験系では実際に使用している時間線量率とほぼ同等の125cGy/minで照射をおこなった.NMT-1とNMT-1Rではp53依存性の照射後早期のアポトーシスとp53の発現変化と放射線感受性の差がみられ、p38の経時的発現増強と,JNKの発現増強を認めた.U937では2Gyの小線量では照射後早期のアポトーシスは認めず,20Gyの大線量で照射後のアポトーシスとJNKの発現増強傾向を認めた.これらの結果から,p53に関連しない放射線感受性にはMAP kinase familyの関与も重要なのではないかと考えられた。そこでA431細胞を用い同様の時間線量率で照射を行ったところ、EGFRのリン酸化を照射1時間後より,6時間後をピークとして9時間後まで認めた。また照射1時間後よりHERのリン酸化も認めた.その下流に位置するMEK1/2,Aktも6時間後より12時間後までリン酸化を認め,照射によるEGFR,HERの活性化とその下流の生存シグナルの活性化が放射線感受性に影響を及ぼす可能性が示唆された.
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