従来心臓領域における画像統合の試みは通常の冠動脈造影を用いるため、統合に際して必要な解剖学的な指標が得られないという欠点があった。これに対しCT冠動脈造影では画像に三次元的な座標軸を有すること、および造影剤の充満していない軟部組織の解剖学的情報が得られる。このことを利用しCT冠動脈造影および心筋血流SPECTとの三次元統合においては左室心筋壁を解剖学的指標として採用した。 また胸部領域の画像統合において問題となる心拍動による誤差の影響はCT冠動脈造影および心筋血流SPECTの拡張末期画像のみを抽出することによって画像統合の誤差軽減を試みた。また現在まで画像統合に用いられる画像変換は現在のところ多くで剛体変換を用いられているが、非剛体変換を採用することによりさらに精度の高い画像の統合を試みた。 虚血性心疾患症例に対し同手法を適用した結果、拡張末期像のみを用いても十分な精度をもった画像統合が可能であった。また剛体変換による画像統合の精度は十分であったが、非剛体変換を用いた画像統合の精度は剛体変換に比べ視覚的および定量的に有意に優れた結果が得られた。ただしこれらの検討に用いられた対象には広範な心筋虚血例が含まれておらず、臨床におけるさらなる有用性の評価が必要と考えられた。また冠動脈の走行と心筋血流との三次元的評価のみならず、CT冠動脈造影から得られる血管内腔の性状、すなわち不安定プラークなどとの関係についてもさらに検討を行う必要があると考えられた。 なお、この研究結果の一部はAnnals of Nuclear Medicine誌に掲載される予定である。
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