本研究では、定量性がすでに良く知られているPETによる脳循環測定との比較を通して、MRIとガドリニウム造影剤を用いた脳循環測定法を確立することを目的とする。まず本年度は、前年度に得られたMRIにおいて造影剤遅延補正を行うことにより両手法でより近い脳血流量が得られる、という結果をまとめて論文投稿を行った(Magn Reson Med Sci.)。これまでは、血管障害の症例においては造影剤の到達遅延に伴い、デコンボリューション解析に誤差が生じることが指摘されてきたが、本研究は健常成人においても到達時間の脳内局所差がわずかではあるが存在し、これがMRIによる脳血流量測定に影響を与えることを示した点で有意義であると考える。 さらに今年度は、MRI撮像方法に関する検討を進めるため、スピンエコーEPI法(SE法)よる予備的な測定を行った。これまでのグラディエントエコーEPI法(GRE法)による測定と比べ、平均血管内通過時間(MTT)に関してはより小さな値を示す傾向が見られたが、SE法による測定はGRE法に比べMR信号の変化が小さいため、詳細な検討のためには測定条件の最適化を推し進める等が必要であると思われた。 また今年度は昨年度に得られたデータの更なる解析を行い、両手法により得られたMTTの差異について検討を行った。データ解析には、昨年度に整備した処理系・補正法を用いた。健常成人のMTTは、灰白質より白質おいてより大きな値を示すことがわかった。両手法によるMTTの違いは局所性に関しては少なかったが、MTTの絶対値としてはMRIの方が約30%小さかった。原因の一つとして、両モダリティ(PET、MRI)の測定感度の血管成分依存性が異なることが推測された。この研究成果は、国際脳循環代謝学会(Brain05)で発表しており、現在論文投稿中(査読中)である。
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