マウス肝移植においてSplit toleranceがどのように生じているのかをまず明らかにするためにマウス肝移植の実験系を立ち上げることを目標とし、期間内に達成した。 元来、マウス肝移植は1991年にピッツバーグ大学のStarzlのもとでQianが確立したもので、その手法は顕微鏡下に体重が約25〜30gのマウスの肝臓をカフ法という特殊な吻合方法を用い、肝下部下大静脈、門脈の吻合を行い、また肝上部の下大静脈を10-0Nylonを用い同所性に移植するというものだが、この手法を用いた実験の報告がされているのは、世界で5施設に過ぎない。そこでこのマウス肝移植の手法を同種同系のマウスモデルでまず確立し、この手法をより困難な同種異系に応用するまでの手法を以下のように確立した。 B10.BRマウス同士のSyngenic combination(同種同系の組み合わせ)で肝移植を行い、現在365日以上の生存を得られるまでに手技を確立した。 次にSplit-toleranceの機序の解明に必要なマウス皮膚移植の実験系の確立するために免疫抑制剤であるFK506(タクロリムス)5mg/kgの連日腹腔内投与によって、マウスにおいて同種異系拒絶モデルで皮膚グラフトの生着をさせる手技を同様に平成16年から17年にかけて確立した。 さらに同種異系マウス肝移植の施行によるSplit-toleranceの機序の解明のためにMale miceでドナーB10.BR(H2^k)マウス→レシピエントB10.D2(H2^d)マウスの肝移植を施行した。上記と同様に現在365日以上の生存を得られるまでに手技を平成17年まで施行し、確立した。 このように当初の目的であるマウス肝移植の実験系を立ち上げることを平成17年度までに十分に確立することが出来た。
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