研究概要 |
【目的】癌の約半数で変異がみられるp53は、細胞の癌化および抗癌剤・放射線感受性に重要な影響を及ぼす癌抑制遺伝子であり、多彩な標的遺伝子の転写を誘導することで、細胞周期停止、アポトーシス誘導、DNA修復を行う機能を持つ。近年、新たにp53の標的遺伝子であることが明らかとなったASC(Appotosis-associated Speck protein containing CARD)は、p53誘導型のアポートシスを制御する遺伝子の一つである。アポトーシス誘導遺伝子を癌細胞内に導入し、抗腫瘍効果を期待するのは理にかなっており、p53やその標的遺伝子であるBax, Noxa等の遺伝子導入による抗腫瘍効果は数多く報告されている。昨年度はASC遺伝子導入が、有効な癌治療戦略の一つになり得ることを報告した。本年度は実際の大腸癌患者でのASCメチル化の頻度と、臨床学的特徴との相関について調べた。【方法】当科において切除された大腸癌16例の標本を用いて、ウエスタンブロテイングおよびメチル化特異的PCRを行い、ASC発現抑制の頻度と機序を解析した。【結果】16例中4例(25%)において、ASC遺伝子CpGアイランドのメチル化によるASC発現抑制がみられた。ASCのメチル化と病理組織学的因子に相関関係は無かった。【結論】大腸癌患者でASCのメチル化抑制がみられたが、その臨床的意義を明らかにするためには、更なる症例の蓄積が必要である。
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