研究概要 |
ケモカインレセプターが癌の転移過程で重要な役割を演じるものと仮定し,(1)早期大腸癌の簇出像に関する病理学的検討,(2)臨床検体におけるCXCR4蛋白発現に関する免疫組織化学を行った.早期大腸癌の臨床病理学的検討からは,簇出と脈管侵襲が重要な因子であることが確認された.しかし癌の明白な転移には,簇出・脈管侵襲・微小転移後のみならず,異所環境での生き残りとその環境への適応が重要である.癌細胞の異所環境への適応をサポートする因子として,炎症・免疫反応に関与する分子(chemokine/chemokine receptor)が深く関っていると考え,CXCR4を標的とした解析を開始した.まず,ヒトCXCR4と蛍光蛋白質GFPの融合蛋白質を発現させるベクターを構築した(pIRES2-EGFP-CXCR4).そのベクターが導入されたヒト培養癌細胞では,蛍光顕微鏡でGFPが確認された.さらにCXCR4が導入された細胞はSDF-1シグナルにより活性化されることをインベーションチャンバーにて確認した.また,抗CXCR4抗体(CXCR4 fusin ; Clone 12G5, BD Biosciences)を用いた予備的検討を免疫組織化学的に行ったところ,食道扁平上皮癌症例の腫瘍細胞や非癌部扁平上皮の傍基底層がCXCR-4陽性を示した.Clone12G5による染色では細胞質と核のいずれかないしは両方に顆粒状の陽性所見を認めたが,CXCR-4の核内陽性像に関する意義は明らかでない.現在,3社からAnti-human CXCR4 fusin monoclonal antibodyが販売されている.大腸癌の簇出像やリンパ管侵襲局所におけるCXCR4蛋白発現の変化を解析するため,アセトンパウダーを用いた免疫沈降にて特異性の高い抗体を選別中である.
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