【目的】今回われわれは、血漿より採取したフィブリンを用いてプラスミドとフィブリンとの複合体が大腸癌転移ヌードラットモデルにおいて局所及び全身投与による遺伝子治療が可能となるかを従来の方法と比較するという新しい非ウイルスベクターシステムの基礎研究を行っていく。 【対象と方法】In vitro実験として、まず血漿よりフィブリノーゲンを抽出後、1マイクロサイズのフィルターにてナノメーターサイズのフィブリノーゲンを分離、回収。電子顕微鏡を用いて採取したフィブリノーゲンのサイズおよびその形状を確認。次に、細胞数あたりのフィブリノーゲンおよびプラスミドの至適濃度を決定するために、In Vitroでの導入遺伝子の発現効率を比較した。細胞株は、ヒト大腸癌由来の細胞株であるDLD-1を使用し、遺伝子発現を比較するため、レポーター遺伝子としてGFPおよびルシフェラーゼ遺伝子プラスミドを使用した。さらにプラスミドによる遺伝子導入効率を上げこフィブリノーゲン存在下における遺伝子導入効率の差異を比較するたるため、カチオニックな分子であるポリエチレンイミン(PEI)を用いた非ウイルスベクター遺伝子導入法を応用した。 【結果】In Vitro遺伝子導入実験では、至適プラスミド濃度は1×10^5細胞あたり8μgでPEI濃度はストック溶液から18μlであった。さらに非定量状態のフィブリノーゲンを加えた遺伝子導入では、加えない場合と比べ、約2倍の遺伝子発現の増加を認めた。現在至適フィブリノーゲン量の決定について検討を行っている。 【次年度実験計画】至適フィブリノーゲン量の決定後、ヌードマウスおよびヌードラットを用いた転移性大腸癌モデルを作製し、フィブリノーゲンを用いたIn Vivoでの遺伝子導入および治療実験を局所投与、全身投与それぞれについて比較検討を行なっていく。
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