再生医療は、機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞を積極的に利用することによりその機能再生を図る医療である。現在殆どの臓器・組織がその研究対象になっている。しかし、呼吸器領域に関して、一部が臨床応用されつつあるが、肺実質に関しては困難な状況である。その原因として肺の構造の複雑さが指摘されており、ES細胞からの誘導は極めて難しい。そこで、胎仔肺組織に着目した。胎生晩期の胎仔肺は、肺としてのある程度の分化が進み、かつ増殖能旺盛な状態と考え、肺胞レベルでの組織再生を念頭に置き、ラット胎仔肺組織の成体肺内移植実験を行ってきた。胎仔移植片の生着・分化を明らかにし、その結果は学会発表してきた(第19回日本肺および心肺移植研究会・第20回日本呼吸器外科学会総会)。 今回のプロジェクトでは、ラットモデルを用い以下の点を明らかにし報告した(第56回日本胸部外科学会総会・第4回日本再生医療学会総会)。 1)レシピエント肺容量を減じた状態では、正常状態より更に換気による肺胞へのmechanical stretchがかかる。このような状態では、胎仔肺移植片はより分化・増殖した。 2)分化・増殖能が旺盛と思われる胎仔肺移植片の方がより成体肺移植片に比べ生着・分化の点で優位性があった。 3)組織学的に胎仔移植片は、レシピエント肺と肺胞レベルでの気道の交通と毛細血管レベルでの血管の交通が示唆された。 今後、本研究を発展させていくことにより、傷害肺の修復再生へのヒント(関与する細胞は?関与する因子は?物理的要因は?)が得られるのではないかと考えられる。
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