研究概要 |
慢性肺気腫に対して遺伝子治療の適応を検討している。実験は、エラスターゼを気管内投与し作製する肺気腫モデルラットを作製した。F344ratを使用し、気管内に純エラスターゼを注入。肺気腫の作製された事をH-E染色で確認した。上記アデノウイルス1X10^7pfu(1X10^8pfuおよび1X10^9pfuも施行する予定)+0.3ccの生理食塩水(Group I)、同量の遺伝子の組み込まれていないアデノウイルス+0.3ccの生理食塩水(Group II, adenoviral control)もしくは0.3ccの生理食塩水(Group III, control)を気管内投与した。 経気道的に導入された遺伝子発現は免疫染色で確認された。導入遺伝子は主に気管支上皮に発現し、血管内皮細胞には発現はなかった。ELISAでは7日目にタンパク発現が最大となり、28日目には発現は消失した。内因性の肺におけるTNF alphaをELISAで確認するとsoluble Tumor Necrosis Factor alpha receptor 1導入群で有意に抑制されていた。以上よりsoluble Tumor Necrosis Factor alpha receptor 1の肺への遺伝子導入はTNF alphaを抑制し、抗炎症性サイトカイン療法として有用である事が示唆された。TNF alphaが上昇している慢性肺気腫に対してsoluble Tumor Necrosis Factor alpha receptor 1遺伝子導入による遺伝子治療が有用となる可能性を示した。 TGFbetaによる効果を確認するためアデノウイルスの精製を行った。TGF betaでは気道内投与にて肺胞の線維化をきたす事は予想されるため、筋肉内投与を行い、発現したTGF-betaタンパクが血流内に入り効果を及ぼす事を期待した。筋肉内に線維芽細胞出現による筋肉の拘縮があり現在適正な濃度を検討中である。
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