研究概要 |
重症感染症や過大な手術侵襲は肺の血管透過性を亢進させ、その結果急性呼吸促迫症候群(以下ARDS)を合併することがある。ARDSにおいて血中のナトリウム利尿ペプチド(ANP, CNP)が上昇する傾向にある。ナトリウム利尿ペプチドは肺血管の透過性に関与しており、敗血症における肺血管透過性の亢進において関与している可能性が考えられた。平成16年度の段階ではLPSを投与した敗血症モデルラットを作成し、ANP及びCNP濃度の変化及びその生理活性受容体(NPR-A)及びクリアランス受容体(NPR-CのmRNAレベルの変化を観察した。(方法)ラットにLPSを投与し投与後1時間から6時間まで一時間おきに血清及び肺組織を採取した。対照として、LPS非投与ラットの血清及び肺組織を採取した。血漿及び肺組織内のANP, CNP濃度をラジオイムノアッセイにて測定した。NPR-AおよびNPR-CのmRNAをリアルタイムPCRにて定量化し測定した。(結果)血清及び肺組織中のANP濃度は経時的に上昇し、投与後4時間後でピークを迎え、その後暫減した。一方、CNPについては、血清3時間後に軽度上昇するも他群と比べ有意差を認めなかった。受容体のmRNAについては、NPR-AmRNAは投与後2時間後にピークを迎えた反面、クリアランス受容体であるNPR-CのmRNAは6時間後にピークを迎えた。(考察)LPS投与によりANP濃度の上昇を認めたが、その生理活性受容体は反応に乏しく、LPS投与によりクリアランス受容体のup-regulationが生じたと思われた。一方CNPの変動は乏しく、ANPが肺血管透過性により寄与している可能性が高いと思われた。平成17年度では中性エンドペプチダーゼ阻害剤を投与し、その結果を調査する予定である
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