研究概要 |
<目的と方法> Gefitinibの感受性の異なる4種のヒト肺癌細胞株(A549,NCI-H23,NCI-H727,NCI-H661)を用いて、1.4つのEGFRファミリー遺伝子(EGFR,HER2,HER3,HER4)の発現レベルとGefitinibの感受性との関連、2.GefitinibによるEGFR増殖シグナルへの阻害効果、および細胞周期への影響、3.GefitinibとHerceptinとの併用効果を制御する分子機序に関して検討した。 <結果> 1.Gefitinibに最も感受性を示したのはA549細胞であり、4種の細胞株においてEGFRファミリーの発現レベルとGefitinibの感受性との間には明らかな相関を認めなかった。 2.A549細胞において、GefitinibはEGFR,HER2、および下流シグナル(ERK1/2,Akt)のリン酸化を抑制し、G_1 arrestを誘導した。 3.GefitinibとHerceptinとの併用に最も感受性を示したのはA549細胞であった。A549細胞において、GefitinibとHerceptinとの併用はGefitinib単独に比し、EGFR,HER2、および下流シグナル(ERK1/2,Akt)のリン酸化抑制、さらにG_1 arrest誘導をより増強させた。またA549細胞において、EGFR/HER2のヘテロダイマー形成が認められ、併用効果を制御する分子機序に強く関与していると考えられた。 <今後の予定> 以上の研究成果をふまえ、さらに本研究ではGefitinibやHerceptinの肺癌における治療効果を制御する分子的背景を確実に把握し、有効な治療法の少ない肺癌に対する分子標的治療による新しい治療戦略を提示していきたい。
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